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腰痛と股関節の関係性!固くなった筋肉が原因?
- 2020年02月13日
- 今回ご紹介する内容は、昨年お伝えした[腰痛は悪い歩き方が原因]内に掲載しようと思っていました。
しかし当時はまだ、完治が見込めなかったためご紹介できませんでしたが、ようやくご紹介できるようになりました。股関節の筋肉が腰痛の原因となった症例
患者さんの名前はAさんで、年齢は48歳の男性です。
Aさんは腰の痛みと臀部の上あたりに熱感を伴う痛みを感じていました。
当院を訪れられた時には既に、数箇所の医療機関を受診されていました。
2つ目の病院で受けた治療で一旦は症状が改善されたそうですが、通院の間隔が空いてしまうとすぐに腰痛が再発してしまったそうです。
病院の診断はどこも同じ診断内容で、不自然な背腰部のカーブが原因とされていました。
3つ目以後の医療機関では、2つ目の病院の治療方法で問題ないと支持していたそうです。
最初は広い範囲の痛みではなかったのですが、数ヶ月の期間で徐々に痛みの範囲が広がっていきました。
痛みのせいで夜寝ている間も寝返りを繰り返し、睡眠も十分に取れなくなっていたそうです。
最初に受診した整形外科クリニックでは、鎮痛剤の服用と湿布剤を処方されましたが「気休め程度しか効果がなかった」とおっしゃっていました。
投薬治療に不満を持たれたため、クリニックの医師の紹介で総合病院の整形外科を受診し、器具を使った腰の牽引を行ったそうです。
総合病院で数回の治療を行ったことで徐々に痛みは軽減し、日常生活でも痛みを感じることがなくなったため、ご自身の判断で治療を終了しました。
Aさんは日常生活で痛みを感じなくなったことで「もう治った」と思っていましたが、1週間も経たないうちに痛みが再発してしまったそうです。
腰痛の再発により、再び総合病院で腰の牽引を受けましたが、「治った」と思っても1週間程度で痛みが出てきてしまうとのことでした。
痛みの再発を恐れるあまり仕事を休み続け、【治療が止められない】と言う状態に陥られてしまいました。
担当の医師から背腰部の筋肉を鍛えることも指示されたため、運動も行いましたが通院回数が減ることはありませんでした。
「何とかして今の状態から抜け出そう」と思われ、他府県の病院や治療院まで治療をしてもらいに行きましたが、「目立った治療はなかった」そうです。
その後インターネットで、整形外科的な治療以外で何か方法がないかと調べた結果、当院のことをお知りになり受診されました。
当院に来院されて、まずはベット上での触診を行いました。
ベッドに寝た状態であれば、背腰部の骨はほぼ真っ直ぐでしたが、立った状態で確認してみると、自然なカーブが取り戻せているとは言い難い状態でした。
次に筋肉の状態も確認しました。
背腰部の脊柱起立筋は萎縮傾向で、驚くことに骨盤周囲の筋肉(大殿筋・中殿筋ほか)も萎縮傾向を示していました。
骨盤周囲に存在する筋肉が萎縮していると言うことは、股関節の可動域に明らかな制限が出てきてしまいます。
触診後、再度ベットに横向きで寝てもらい、股関節の可動域を計測しようとしました。
しかしAさんの股関節は、後方伸展(足の後方への蹴り出し動作)はおろか、完全伸展(体幹に沿って真っ直ぐに伸ばす)ができませんでした。股関節の可動域の重要性
正常な股関節の可動域は次の通りです。
屈曲(前方挙上):125度
進展(後方挙上):15度
外転(側方挙上):45度
内転(内方挙上):20度
日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会(平成7年 4月改定)
また、股関節の可動域が制限されると以下のようなことが起こります。
1.屈曲方向(股関節の前方挙上)が制限される場合
歩幅が短くなることで、爪先に十分な重心がかからなくなり踵を擦る歩き方になります。
2.伸展(真っ直ぐに伸ばす)方向が制限される場合
直立の姿勢では、腰から上が前方に傾き、転倒を避けるため無意識に膝が曲がります。
膝が曲がったままの姿勢が普通となり、どれだけ姿勢を変えても、どんなに足の力を抜こうとしても自分では膝が伸ばせなくなります。
3.更に伸展(後方挙上)方向が制限された場合
足の蹴り出しが小さくなり、屈曲方向が制限された時同様、歩幅が小さくなります。
足の蹴り出しが小さくなると、下肢(股関節から足先までの部)の諸筋肉の活動も小さくなり、やがて筋肉は萎縮してしまいます。
股関節が真っ直ぐに伸ばせないと、体幹はその分だけ前傾した姿勢になることは想像できるのではないでしょうか?
歩く際も股を前後に開くことができず、小股で歩かなくてはいけなくなります。
小股での歩行は、膝にも負担が掛かり、どの姿勢でも足の諸筋肉に過緊張を与えてしまいます。
Aさんの場合は、股関節の筋肉が硬くなり可動域が狭くなったことが、腰の牽引を行って背や腰を伸ばしてもすぐ元に戻ってしまう原因でした。股関節の治療
その後股関節の周囲は勿論、膝の屈曲・伸展に関わる諸筋肉を緩ませましたが、膝の関節可動域だけは完全回復しました。
一方股関節においては、可動域制限の30%までしか回復ができませんでした。
しかし通常の立位姿勢が取れるようになったため、継続治療することをお勧めしました。
ですがAさんは実費治療が負担と考えられ、私の所見を文章にして持ち帰りたいとおっしゃいました。
仕方なく紹介状と言う形で私の所見を持ち帰ってもらい、総合病院でリハビリ治療を行えるように取り計らいました。
ところが数日後、総合病院の担当医師から電話がありました。
電話の内容は理学療法士の方が、「総合病院の治療では患者さんが凄く痛がるので、そちらで治療を継続してくれませんか?」と言う、いわば施術依頼の電話でした。
Aさんは私のやる治療が、病院のリハビリ施設でも同じように受けられると考えられていたようです。
しかし一般的な理学療法士によるリハビリ治療は、機能回復を目的とするものです。
当院の治療のように筋肉の緊張を緩めたり、血流の回復を行い痛みを制御したりするようなことは行いません。
総合病院のリハビリ治療では、動かし難い関節を無理に曲げ伸ばしするため、かなりの痛みを伴います。
筋肉の緊張を緩めたりはしないので、当院の治療とは感じる痛みの度合いが違います。
本人の力に加え理学療法士の力も借りて、可動しない方向へ何度も動かすので、激痛が伴ってしまいます。
この痛みに堪えながらする運動を継続できる人は、なかなかいないのではないでしょうか。
当院で同様の治療を施すなら、まずは硬く張った筋肉を緩ませ、最初は他動的に動かします。
他動的に動かすことを何度か繰り返したら、最後は当人に他の人の力を借りずに動かしてもらうようにします。
当院の治療の場合、痛みを感じるとすれば筋肉を揉みほぐす際の痛みだけです。
関節を動かし「これが限界」と言うところで更に筋肉を揉みほぐしながら治療を進めていくので、リハビリ治療よりも痛みを感じずに済みます。
総合病院の依頼を受け、当院でもAさんの治療を継続して行なうようになりましたが、平行して総合病院の診察も継続されました。
Aさんは他府県の方で、遠距離の通院となってしまいますが、「再発予防の運動も教えて欲しい」と言われ、完治への意欲を持たれました。
4回目の治療で、Aさん自身で動かせる股関節の可動域が50%を越えようとしていたので、「ほぼ治ったのでは」と思い、総合病院の担当医師に電話で伝えました。
Aさんから総合病院の担当医師の話を聞くことがなかったため、意見交換をするのはその日が初めてでした。
先生は「貴方が充分と思うならそうなのだろうけれど、一応こちらでも診察してから判断します」とおっしゃいました。
Aさんはその後も、担当医師の判断で通院を続けて、関節可動域を更に広げられるようにリハビリを続けたそうです。
しかし最終的にAさん自身で動かせるのは60%程度が限界でした。
ベッド上で私の力を使えば60%以上動かすことは可能でしたが、自身で歩行する際はやはりできませんでした。
萎縮していた大殿筋やその他の諸筋肉は、施術によりほぼ弛緩していたので、他動的ではありましたが、痛みも無くほぼ可動域いっぱいに曲げることができました。
普通に歩くなら、足の後方挙上は60%もあれば充分で、大股で歩行することが可能です。
街で歩く人を見ても、大きく大股で歩く人は珍しいですし、立位で股関節が真っ直ぐなまま歩けるのなら姿勢は崩れないため、腰痛の原因となった前傾姿勢をしなくて済みます。
当院で或る程度股関節を伸展させることができるようになったことを確認して、Aさんに腰の痛みを確認すると、「もう痛くない」と言われたので、当院での治療を終了することを伝えました。
ところがAさんは「あっちの先生はどう言うかな」と言われ、当院での治療終了を渋られました。
なので当院から総合病院の担当医師に「こちらでやれることは終わりました」、「後はそちらのリハビリにお任せしたい」と電話でお伝えすると、快く引き受けてもらえました。股関節の筋肉が固くなることで腰痛になる理由
では何故、胸腰部の自然なカーブが失われると腰痛を起すのでしょう?
筋肉が力を発揮している時をON、力を抜いている時はOFFとします。
ONの時は筋肉が緊張し、関節を動かし力を発揮します。
OFFの時は筋肉が弛緩し、血液による栄養の補給が受けられます。
背中や腰のカーブが正常なら、関節の動きに制限が加わることもありませんが、カーブが正常でない場合は柔軟性も失われ、身体の動きが小さくなります。
身体の動きが小さくなると筋肉の動きも小さくなり、血液の補給も少なくなります。
この状態が長く続くと、やがて関節は硬く固まり、動かせない筋肉は縮まってしまいます。
筋肉には運動神経と感覚神経が存在していますが、筋肉が萎縮すると弾力が失われ感覚神経を圧迫します。
筋肉の血流が悪くなると、感覚神経が圧迫されてしまい、圧迫された刺激が脳に伝わり、痛みとして感知しやすくなってしまいます。
痛みを感知しやすくなるため、胸腰部の自然なカーブが失われると腰痛を起こしてしまいます。まとめ
総合病院では、背腰部の自然なカーブが失われたことが腰痛の原因と考えたため、腰の牽引をすることで痛みを改善しようとしました。
その結果、一時的に正常なカーブが取り戻されたため、その間は筋肉が緩み腰痛が改善できました。
しかし股関節を真っ直ぐにできないAさんは、腰から上の体が前傾してしまうため、腰部の自然なカーブが失われ腰痛の再発を繰り返していました。
最近の病院の診察では、画像検査にこだわり、触診を疎かにする傾向があります。
当記事でご紹介した事例が触診を疎かにしていることを証明していると思いますが、「これでは治らない」と別の方法を探されたAさんの努力が完治まで繋がったのではないでしょうか。
2019年は今回の症例に加え、数ヶ月或いは数年間、他の医療機関に通院したものの、症状の改善されなかった人が多く当院に来院されました。
中には手術を受けるため、数日後に入院する予定だった方もいらっしゃいました。
詳細はまた次回以降の記事でご紹介しようと思います。
著者プロフィール
兼田 茂和
国家資格あん摩マッサージ指圧師保有。
日常的に抱えている慢性痛に対し、その痛みの原因を追究して根本を改善することで、痛みの軽減を目指します。日々、人の命を預かる重みを感じ、ひとりひとりに合った施術で、最後まで誠心誠意施術致します。
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