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肩凝りが原因のめまいで命の危険に繋がる!?
- 2020年10月29日
- 先月は頭痛の発症メカニズムと、肩凝り由来の疾患の典型例をご紹介しました。
机上のお仕事をされるうち、頸肩部の諸筋肉が凝り固まり、総頚動脈を圧迫されたことで頭痛や嘔気を感じられたものでした。
今月も肩凝りにより頸部の異常をきたされたことで、動脈の血流が悪くなり脳の一部が虚血状態にさらされた症例です。
何れの患者さんも肩凝りの自覚があり、それなりにご自分で対処されていたのでしたが、殊に後述する人は我慢強いと言えるのか、自己判断で「まだ大丈夫」と症状が重篤化するまで当院にお見えになりませんでした。
今回は椎骨動脈と呼ばれる脳の栄養血管が血流を阻害され、もう少しで命の危険にさらされてしまうところだった症例です。肩凝りが原因のめまいで命の危険にさらされた実例
今回の患者さんは、「Tさん 57歳 男性」です。
机上のお仕事が多く、パソコン作業だけではなく紙の書類も扱われてます。
仕事に熱中するあまり、眼を机やパソコン画面から離した途端、軽いめまいを感じることが多かったようです。
しかし暫くすると頭がはっきりすることで、現在の状態をそれほど酷いものとは思われませんでした。
当然普段から肩凝りの自覚症状はお持ちで、椅子に座っている際や立ち上がった時にも時々首を回したり、自分の手で肩を揉んだりされてました。
更に最近は自宅で、風呂からあがってから奥さんに肩を叩いてもらったり、揉んでもらったりした後湿布を貼っておられます。
揉んでもらっている際は気持が良く、スッキリした気持で布団に入られるのでしたが、朝には首を回さずにはおられない生活をされてました。
前回当院にお見えになったのは一年以上前のことで、「よくこんなになるまで我慢されてましたね」とお伝えしたものです。
或る日、Tさんは友人と渓流釣りの道具を見に釣具屋に行かれました。
その時車をバックさせようと首を捻った途端、直後の記憶が無い状態に陥られました。
直後体幹で大きな衝撃を受けたようにも感じられたのでしたが、ご本人はほとんど実感が乏しいもののようでした。
2度目の衝撃で徐々に意識を取り戻されたのですが、その衝撃は助手席の友人がサイドブレーキを引いて、Tさんにのしかかるようにエンジンキーに手を伸ばしてきた際の衝撃でした。
Tさんは何が起こったのか判らず、ボンヤリしてたようでしたが、「どうしたんだ!」と言う友人の言葉で完全に意識が戻ったようでした。
以上のような事は問診の際、Tさんの友人の弁で経過を組み立てて記述したものですが、Tさんは「まるで一瞬の出来事だった程度にしか感じられなかった」とおっしゃいました。
事実はTさんが運転する車の一方の車輪が車止めに衝突し、それでもブレーキを踏むどころかアクセルを緩めなかったため、友人が気転を効かせたおかげで大事には至らなかったと言うことでした。
当然買い物はやめ、その足で当院を受診されたのですが、事の重大さに問診でも触診でもTさんの体の震えは収まりません。
要領が得られないTさんの替わりに友人が上記のことをおっしゃり、事情が認識できたTさんが、納得できて普段の身体状況を述べていただけました。
触診させていただくと頸部はストレートネックを呈し、頸肩背部の筋肉は過緊張のレベルを通り過ぎ骨に張り付き、廃用性萎縮を呈してました。
頸部を触診するうち、項に私の指が強く触れますと瞬間で頸肩部の力が抜けたように頭部を揺らされました。
その一瞬で言葉は途切れ、明らかな頭部の虚血を記すめまいを生じさせられました。
これで日常の頭痛やめまい、意識障害の原因が判明しました。
私は椎骨動脈圧迫症候群による血流障害と判断し、頚椎周囲の筋肉の過緊張を除去する治療を行ない、更に側頸部と肩上部や胸背部の治療を続け、症状の改善に努めました。
結果、同じ動作でも私が指で同動脈を圧迫しても症状の再発は見られませんでした。
以上のことから症状の一応の消滅を見ましたが、骨の変形が予想されるため、病院での造影検査をお願いし、後日再度ご来院いただく事にしました。
病院の検査の結果幸いにして、異所性化骨は認められませんでしたがやはり注意を要するとの事で、継続治療を必要とされ、現在は頸肩背部の凝りを除くため定期的な治療を施しています。
※異所性化骨とは書いて字のごとく、誤ったところに骨の隆起やトゲができることです。頭痛やめまいを引き起こす椎骨動脈圧迫症候群とは
後頸部にあるこの動脈に肩凝りなどで圧迫が加われば、後頭部内の呼吸や循環、食物を消化するなどの中枢である延髄や、行動の微調整を司る小脳等の血流(栄養)を障害し、様々な症状を引き起こします。
椎骨動脈は、後頸部の第6頸椎から第1頸椎までの頚椎横突起孔と呼ばれる骨の穴を上行し、頭脳に達します。
後頸部の筋肉の強い過緊張状態以外では、異所性化骨と呼ばれる骨の変形により、頚椎)に骨棘(トゲや隆起)が発生し変形したものでも生じ、結果血流を阻害し、上記のような症状を起されます。
首や肩の姿勢の悪さから生じる事が知られており、上記症状を起こされるまでに、長期間肩凝りや首の疲れを感じておられた人に多く見られるようです。
筋肉が災いしているなら症状の改善は早いのですが、骨が影響しているなら更なる病状の進行が予想されます。
肩凝り症状以外の主たる症状は、頭痛・めまい・失神発作・複視(乱視)・耳鳴り等が発生します。
※体幹(主に内臓)にも症状が表れますが、今回は省略させていただきます。
Tさんのように首を振るなどした時や、後頸部を圧迫した場合に症状を増悪され、顔を正面に向ければ、暫くすると症状は改善しますが、屋外での歩行中や車を運転中に起されると大変危険です。まとめ
自動車の運転中、意識を無くして事故を起こした例は少なくありません。
「アクセルとブレーキを間違えた」と言う加害者の中には今回の症例に当てはまる事故も含まれているはずです。
Tさんは幸いにも友人が助手席に乗っていたため、異常に気がついて最悪の事態が避けられました。
肩凝りが積重なり頸部の諸動脈の血流が妨げられれば、前述の症状や後述の総頸動脈圧迫による症状が起こる可能性があります。
以上のような事から酷い肩凝りを感じたなら、自動車やバイク又は自転車の運転は避けるべきでしょう。
予防策としては凝りを感じたら直ちに治療を施すことが大事と言えますが、湿布や素人の行なう揉み解しなどは初期のうちなら有効と言えますが、慢性的な凝りでは専門家の施術でなければ効果は得られないでしょう。
病院での治療は、頸部をカラー固定したり、それでも改善しない場合は、骨棘の除去を必要とされる事も有ります。
これに似た症状を前頸部の凝りでも起される場合があり、斜角筋を凝らされた場合に、総頸動脈の血流を阻害する事で、耳を栄養が損なわれ、身体の平行感覚に関与する三半規管が障害される事で、完全な失神は起こらないでしょうが、めまいやフラつきが起こる事があります。
※斜角筋とは、頸部の深部で頚椎の側面にある細長い紡錐形の筋で、前から順に、前斜角筋・中斜角筋・後斜角筋があります。
その他の症状として眼のピントが合い難くなったり、難聴をきたしたり、耳閉感もきたします。
※総頸動脈の血流を阻害する肩凝りの実例は、次回ご紹介します。
どちらの疾患も、頸肩部に異常をお感じになっても、そのまま放っておいた結果が生んだものです。
Tさんの治療は二度目で、一度目は今回の症状に加え酷い頭痛を感じてお見えになられました。
定期的にお見えになる人では、上記のような症状を訴えられることは皆無ですが、ご自分の身体を過信される人に多く見られる疾患です。
重ねて述べさせていただきますが、湿布(塗り薬や貼り薬)では身体の浅い部分の筋肉にしか効果が無く、素人の施術では血流促進の観点からでの施術が難しく、評判の良い施術者がいる医療施設での治療をお勧めします。
いくら素人の人が完璧に施術したつもりでも、解剖学や生理学の知識の無い人なら、主たる症状の根源を解消することは断じて無いからです。
著者プロフィール

兼田 茂和
国家資格あん摩マッサージ指圧師保有。
日常的に抱えている慢性痛に対し、その痛みの原因を追究して根本を改善することで、痛みの軽減を目指します。日々、人の命を預かる重みを感じ、ひとりひとりに合った施術で、最後まで誠心誠意施術致します。
WEBサイトの営業電話はお断りしております。