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坐骨神経麻痺と誤診された症例
- 2021年10月29日
- 先月は整形外科でただの肩凝りを「五十肩」と誤診され、症状を重篤化された人の症例をご紹介しました。
肩関節の可動域が狭まったり、腕を動かす際に肩周辺に痛みを感じて「これはひょっとして五十肩では?」と思われ、病院を受診して誤った診断をされた人たちでした。
肩関節の疾患にとどまらず、腰部や下肢の症状でも重篤な疾患と自己判断され、経験の浅い医師に診てもらい、結果誤診されるケースがよくあります。
今回のお話しはその極めつけの症例と言えるでしょう。坐骨神経麻痺と誤診された人の実例
Nさん62歳は会社役員で、好き嫌いが多いのか食は細く、特に運動などはされず、毎日を自宅から会社まで自動車通勤をされてました。
足に異変を感じられたのは2021年の6月頃で、起床時に突然足に力が入らなくなりました。
なんとか立ち上がろうと横に転がり、家具に掴まりながら立ち上がろうとしたのですが、どうしても足に力が入らず痺れを感じられたようでした。
そのため当日は出社を取りやめ、病院を受診することにしたそうです。
当然Nさんは「どんな病気だろう?」と考えられ、数日前に腰が痛い日があったのを思い出しました。
その経過から「これは以前聞いたことがある坐骨神経痛(麻痺)では?」と考えられました。
病院に着かれ、問診で前述のことをお話になり、医師は腰部のレントゲン検査を実施しました。
結果、上位腰椎の後方への飛び出しが見つかり、Nさんの考えが裏づけされた結果となりました。
医師からは手術が必要な説明を受け、7月半ばの手術を提案されました。
そのため手術前に入院して、種々の検査をすることに決めたそうです。坐骨神経麻痺とは
坐骨神経の中には運動枝・知覚枝および自律神経線維が含まれており、この中で主として運動枝の障害が著明になったものが坐骨神経麻痺と呼ばれています。
神経線維の太さの順は、運動・知覚・自律神経の順で、一般的に神経の圧迫障害のときはこの太い運動神経が最も障害を受けやすく、麻痺が出現します。
ここで言う痺れとは感覚麻痺のことで、例えば皮膚を強く圧迫してもそれが自覚し難いものを言います。
全断裂の時は全要素が障害されます。
神経の圧迫症外とは、脊髄から出る神経は腰部の椎間関節と呼ばれる骨と骨の隙間を通過するわけですが、自然な身体のカーブが失われた腰部では、神経を骨が噛むことを言います。
坐骨神経はその走行中に多くの筋支配運動枝を出し、上位から順に中殿筋→小殿筋→大殿筋→大腿筋膜張筋→梨状筋→上双子筋→下双子筋→大腿方形筋→大腿二頭筋→半腱様筋→半膜様筋→大内転筋に運動枝を出しています。
さらに下行して腓骨神経と脛骨神経に分離し、これらの腓骨神経・脛骨神経は坐骨神経からの続きですが、各々の麻痺はそれぞれ腓骨神経麻痺・脛骨神経麻痺と称することがあります。当院での治療
それから当院を訪れられたのは入院の2日前で、手術をすることに恐怖を感じられ、「手術以外に何とかならないか」と来院されました。
当院の診断でも「手術しか治す方法がない」と言うことなら、納得して病院で治療を受けられるという、心の後押しが欲しく受診されたそうです。
来院時は車椅子を使い、当院まで来院されました。
問診で発症時の経過と病院の診断結果を伺い、「今は足が痺れて立ち上がるのも困難」、「しかし腰痛はそれほど感じない」という現状を付け加えられました。
現在の症状と医師の診断にその時は異論は持ちませんでしたが、触診で著しい違和感を感じました。
Nさんの腰部は全ての腰椎が後方に飛び出し、特にL2が際立って飛び出してます。
では下肢はと言うと、運動不足のため足はほとんどの筋肉が衰え、特に脹脛を構成する下腿三頭筋やアキレス腱は惨い状態でした。
「足全体が痺れてますか?」と私が問うと、「特に太腿の後側」とおっしゃったので、僅かに違和感のようなものを感じました。
私が念のため「尻の辺りから足全体ではないんですか?」と尋ねると、「そうではない」とはっきり応えられます。
「それはおかしい」と思った私がハムストリングスを触診してみると、案の定三筋は堅く固まって、揉捏法で解すと徐々に痺れが消えていきました。
「アレッ?、痺れが消えた!」と言うNさんに、更に幾度かの運動法を繰り返しベッドから降りて足の状態を確認していただきました。
ベッドから自力で降りられた時には多少はふらつかれましたが、暫くすると安定した直立が可能でした。
狐に抓まれたような感じでNさんは「治ってる!」とおっしゃり、次は腰部の矯正を図ることにしました。
脊柱直側の筋肉も著しく衰弱しておりましたので、腰椎を真っ直ぐに矯正するのは容易で、15分程度で整復することができました。
ご本人に腰部に触れていただき、完全に腰椎の整復ができたことを確認していただきました。
腰痛の原因はただでさえ筋力を失った脊柱起立筋が、腰椎が後方に飛び出したことにより生じたものでした。
そのため、腰椎を正常に整復することで痛みや違和感を消すことができました。まとめ
以上のことからNさんの主症状は大腿内後側の痺れだけで、腰椎由来の疾患とは異なるものでした。
レントゲン検査で腰椎の飛び出しが認められたものの、殿筋には症状がなく、更に直下のハムストリングスの諸筋に痺れが生じているのですからこの筋群に限られた病態です。
腰に痛みがあり、足が痺れると言うだけなら医師でなくとも「坐骨神経に異常があるのでは?」と考えるのは一般的です。
問題は痺れている箇所と痺れの質です。
Nさんの言う痺れとは、まるで長時間正座をして立ち上がる際の「痺れが切れた」と言うものでした。
しかし本当に坐骨神経麻痺による痺れなら、痺れを生じている箇所の感覚は無くなっているはずで、仮に大腿部だけでも局在性が乏しく、正確に痺れを感じている箇所を示唆できません。
それが「何処が痺れてますか?」と言う問いに、「太腿の内後側」と断定できたのですから、坐骨神経麻痺ではないと言うことになります。
どうやら前述の病院の医師は、問診だけで痺れの箇所が局在性が明確だとは思わなかったんでしょう。
腰椎が飛び出し、足に痺れを感じていたならそれは坐骨神経麻痺と即決し、何の疑いを持たずに手術を勧めたわけですから、以後もこの医師は誤診する可能性があるのでは?。
Nさんに治療後に院内を歩いていただきますと、小股で踵を床に擦った歩きをされます。
この歩き方は今年の6月に紹介した靴の踵を踏んで歩く小学生の歩き方と同じです。
膝関節をほとんど使わず、当然足首の関節も動かさずに歩いておられたのですから、膝関節の屈曲の役目を果たすハムストリングスの諸筋は廃用性萎縮の呈をなします。
前述のように筋肉には運動と感覚を司る神経が存在し、萎縮による圧迫が加わった三筋肉が血液による栄養が滞り痺れをきたしたものですから、手術で治るはずはありません。
仮に手術をされたなら、無駄に手術による痛みに耐え、余計な出費を支払わねばなりません。
それでも足の痺れが改善できたなら文句はないでしょうが、改善どころか余計な疾患を更に抱え込む結果となったでしょう。
Nさんはまるで途方にくれたように「明後日入院することになってるんですが」とおっしゃり、どうしたら良いのかと続けられました。
私は「入院のキャンセルをするしかありませんね」とお伝えしました。
症状が全てなくなったのですし、そもそも医師の誤診だったのですから、入院はおろか手術なんてする必要がなくなったのですから。
Nさんには再発予防のため、踏み台運動を指導し、下肢の筋力強化を図ることにし、健全な下肢の筋肉を作ることで再発の予防を図ることにしました。
著者プロフィール

兼田 茂和
国家資格あん摩マッサージ指圧師保有。
日常的に抱えている慢性痛に対し、その痛みの原因を追究して根本を改善することで、痛みの軽減を目指します。日々、人の命を預かる重みを感じ、ひとりひとりに合った施術で、最後まで誠心誠意施術致します。
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