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コルセット装着が弊害に?腰痛再発防止の問題
- 2022年03月22日
- 治療が完治し、再発予防を試みたのにも関わらず、思いも寄らないことが原因で、再発予に期間を要した症例、今回は第3段です。
先月は腰痛治療後、指導した再発予防の運動を続けていただいたのにもかかわらず、何週間を経ても正常な身体のカーブが崩れ、腰痛を再発された人の症例をご紹介しました。
原因は病院の指示で血液成分の値を低くするため、食事を血液や筋肉の材料となる栄養分の摂取を制限されていたからでした。
結局、病院の医師と私とで互いに妥協できる血液成分の値をコントロールし、不充分ではありましたが、脊柱の柔軟性の保持と筋肉量の増加により改善を見たと言うものでした。
今回ご紹介する症例は、先天的な虚弱体質により筋肉の付き難い人が腰痛を発症し、完治に至りそうになっても何故だか期間を要した症例です。来院のきっかけ
Kさん53歳男性は京都市在住で、タクシーの乗務員をされています。
腰痛は現在のお仕事をされるようになってから発症したようで、整形外科クリニックを度々通院されていたようです。
業務でお客さんの荷物をトランクに積む際や降ろす際、腰の鋭い痛みを堪えながらの作業が一番辛かったようでした。
「これでは仕事が続けられない!」と思われ、幾つもの整体院や鍼灸院の治療を受けられたのですが効果が持続せず、県境を跨いで当院を訪れられました。来院時の状態
前述のように痩せ気味のKさんの身体は筋肉量が乏しく、身体を支えるのは困難と言える状態です。
骨はと言うと、著しく身体のカーブが失われ、全ての胸腰椎が後方に飛び出してます。
中でも腰椎の飛び出しが著しく、指でしっかり抓めるほど飛び出してました。
特筆すべきは股関節で、後方挙上はおろか真っ直ぐに伸ばすことも困難でした。
故に膝関節も伸ばすことができず、仰臥位では膝裏がベットから離れ、私の拳が楽々通過するほどです。
当然殿部の筋肉(大殿筋)の廃用性萎縮は酷く、お尻を抓んでも皮膚しか触知できません。
私が大腿部の筋肉に触れますと、「ウッ!」とか「ウーッ」と痛みに耐える声を発せられました。
「これは重篤だ」と考えた私は、まず股関節の関節と膝関節の関節可動域の回復に努め、硬く萎縮していた大腿四頭筋とハムストリングスの諸筋を緩ませることにしました。
一度目の施術で膝裏のベットとの隙間が、掌が入る程度にまで回復しましたが、当日はこれが限界でした。
続いて股関節外側の中殿筋の施術で若干の直立姿勢(下半身のみ)の回復が見られ、腹臥位での施術が可能になり、背腰部の治療に取り掛かりました。
当日の全ての治療が終わる頃には、中位胸椎から下位胸椎までは60%程度にまでは伸ばすことができたのですが、上位胸椎と全ての腰椎には殆ど変化がありませんでした。
と言うのは虚弱体質のKさんの骨は同年代の人より脆弱に思えたので、強い圧力には耐えられないと考えたからで、少しずつ伸ばすことにしました。半年以上経過しても筋肉の発達が見られない・・・
通院回数が17回、期間にして4ヶ月弱)でやっと完璧とは言えないまでもほぼ真っ直ぐに立てるようになりました。
期間を要したのは、8度目の治療までは施術しても次の来院時には元の初診時の姿に戻ってしまったからで、9度目以後は徐々に良姿勢を維持できるようになったからです。
この頃には腰痛や背の突っ張り感、更には下肢の可動域制限などは無くなり、Kさんは前途の明るさを身に染みておられたようでした。
しかし病的状態が残存したのは腰椎で、指で抓める腰椎が僅かに触れる程度にまでは回復したのですが、現状ここまでが限界のようでした。
ご存知のように、当院では再発予防のため患者さんには運動を指示し、再発が防げるようになるまで通院していただいております。
Kさんにも通院回数が15回目の頃から腹臥位での運動を指示し、最初に筋肉の発達が見られたのは大殿筋でした。
側臥位での自動的運動では、両側の股関節が後方挙上できるようになり、歩行も中股でスタスタ歩けるようになりました。
しかし何故だか半年が過ぎても背腰ぶ、殊に腰部の筋肉の発達が殆ど見られません。
以前のことがありますので、「当院以外に医療機関を受診されてませんか?」とお尋ねしても、答えは「いいえ」と言うものでした。
「では背腰部の運動はしっかりやってますか?」と尋ねても、「はい、やってます」とおっしゃいます。
その内、背部には筋肉の発達が見られるようになり、以後の施術で腰椎は更に回復したのにもかかわらず、まだ腰部の筋肉に発達が見られません。意外な原因
後日、意外なことで腰部の諸筋肉の発達が阻害される原因が判明しました。
初夏を迎え、衣服が薄着になったことで更衣室での脱衣が不要になり、ベット横に備え付けの篭にカッターシャツを脱がれたことで判明しました。
驚くことにKさんは何故だか腰椎が真っ直ぐになっているにもかかわらず、シャツの下にコルセットを装着されていたんです。
「これはいつから着けてたんですか?」と尋ねると、Kさんは悪びれもせず「最初に受診したクリニックに通院していた頃からです」とおっしゃるのです。
どうやら最初に受診した整形外科で、医師に「腰を庇うために着けてなさい」と指示されたようで、それを「ずっと着けてなさい」と理解されたようでした。
私は直ちに装着をやめるように指示し、それでも前屈姿勢で重量物を扱う際のみ使用を許可しました。
以後の再発防止の運動でどうにか腰部の筋肉の発達が見られたことで、治療を終了しましたが、通常よりも余計な期間を要したことは間違いの無いことです。
言うまでも無いことですが、以後も運動を継続していただくことを確約していただきました。
* 腰痛の発生のメカニズムについては、以前に幾度もご説明しておりますので、今症例では省略させていただきました。まとめ
正常な人の身体のカーブは横から見るとアルファベットのSの字をしているのですが、Kさんの身体のカーブはまるでCのように丸まっておられたのです。
この姿勢では、背腰部の骨はおろか股関節にも悪影響が及び、前方に転倒することを避けるため膝関節を常に屈曲させなければなりません。
ですから背腰部の諸筋肉は過伸展を余儀なくされ、血液の供給を受けることが無くなります。
更に股関節を前方に屈曲させることで殿部や大腿部の諸筋も廃用性萎縮させておられました。
Kさんは腰痛発症当初、整形外科クリニックを受診され鎮痛剤の投与を受けておられたのですが完治に至らず、医師から腰部を守るコルセットを処方されたようです。
しかし何故「ずっと着けてなさい」と指示されたと思いこんだのかが不思議で、姿勢が回復したにもかかわらず装着しておられたのですから、常識では考え難いことでした。
腰部コルセットとは筋肉量の不足を補う際や、姿勢が崩れるのを補助するために装着するものです。
装着すれば良姿勢を維持することも、僅かな姿勢の崩壊から及ぼす腰痛の回避に役立つのですが、Kさんには[焼け石に水]だったようです。
ですから装着を継続すれば、自前の筋肉を使うことが少なくなり、筋肉が廃用性萎縮をきたす危険があるからで、それを「ずっと着けてなさい」と医師が言うはずがありません。
ですから筋力強化運動を行っても、その後にコルセットを装着すれば何にもなりません。
Kさんは仕事中だけではなく、睡眠中でも腰痛に悩まされていたようで、入浴時以外はコルセットの装着をやめられなかったようです。
しかし当院を受診される前のような、まるで半円を描くような姿勢だったのが直り、殆ど正常な身体のカーブが取り戻せたのです。
背や殿部に健全な筋肉が着いても、使用をやめられなかったのが治療の長期化を招いた根源でした。
因みにKさんの名誉のために付け加えますが、再発予防の運動中はコルセットは外して行なっておられました。
著者プロフィール

兼田 茂和
国家資格あん摩マッサージ指圧師保有。
日常的に抱えている慢性痛に対し、その痛みの原因を追究して根本を改善することで、痛みの軽減を目指します。日々、人の命を預かる重みを感じ、ひとりひとりに合った施術で、最後まで誠心誠意施術致します。
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