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自己判断で運動の方法を変更した人
- 2022年07月19日
- 今年の最初のテーマとして私が思いもつかなかったことが原因で、完治に期間を要した症例をご紹介しております。
人体には自然なカーブと言うものがあり、正常な人なら横から見るとアルファベットのSの字をしていますが、破歩等で下肢に異常があればその形が崩れます。
崩れたカーブ付近では、背腰部の骨(背部は胸椎 腰部は腰椎)の柔軟性が失われ直側の諸筋肉は過緊張を強いられます。
これが背腰部の痛みの原因です。
明らかに破歩(何らかの障害により、正常な歩行ができない状態)が原因で腰痛をきたしている場合は下肢の異常な過緊張が生じることが多いため、その箇所も緊張緩和を図らないと腰痛が再発するおそれがあります。
何らかの疾患をお持ちの人や、異常な体型の人を除けば一度の施術で整復は可能ですが、破歩が原因である場合は若干期間を要します。
つまり継続治療を要すると言うことになるのですが、期間は人それぞれで、ある程度の筋肉を有する人ならそれほど期間がかからないこともあります。
人体の自然なカーブが取り戻せ、諸関節の柔軟性や充分な筋力、正常な歩行が取り戻せば、腰痛の再発の危険性は殆ど無くなるでしょう。
継続治療の期間中に柔軟運動野筋力強化運動を行っていただくのですが、殆どの人の場合数週間で、永い人でも一ヶ月を過ぎる頃には正常な身体のカーブが取り戻せるでしょう。
しかし中には「もう治った」と自己判断され、通院はおろか運動も中断され、著しく期間を要した人がおられました。
稀には腰痛の原因となる行動を私に告げず、長期間通院された人もおられました。来院前の状態
Dさん(40歳)は男性で、健康なときは毎日12kmのランニングを日課にしていた人です。
腰に異常を感じられたのは庭の植木鉢を移動させた際で、鉢を下ろして背を伸ばした際に痛みとは言えないまでも、腰周辺に違和感を感じられました。
暫くは日常生活に不便は無かったのですが、ある日ランニングで約7km走ったところからジワジワと腰痛を感じ、その日のうちに整形外科を受診されました。
整形外科ではレントゲン検査をされたのですが異常は見つからず、「ただの筋肉痛」と診断され、湿布の処方をされたようです。
以上のことからランニングはやめられ、会社勤務をされてたのでしたが、今度は椅子に座っているだけで腰痛を感じられるようになられました。
当院を訪れられたのは植木鉢を動かしてから約一年後でしたが、詳細は次のとおりです。
触診では背腰部の飛び出し、特に腰椎のL3の飛び出しと、左腸骨の歪み、腰部脊柱起立筋の左側の萎縮、大腿部の諸筋の過緊張でした。
殊に両側ハムストリングス(膝関節屈筋群)が、少しの圧力でも鋭い痛みを生じさせたようで、Dさんは「ウッ!」と呻き声を出されました。
Dさんの主訴は腰の左側と左足の痛みだけでしたが、それ以外の箇所の自覚症状は
まだ乏しいようでした。
治療は異常を起こしている箇所の諸筋肉の緊張緩和を図り、脊柱・骨盤矯正で正常化を果たすことができましたが、長期間症状を放置させていたため、背腰部の柔軟性が失われてます。
更に歩行では腰痛を庇っていたためか、踵に重心を置いた歩きになって、膝が外を向く外反股と言う状態になっています。
この歩き方では膝関節が完全伸展できないため、仰向けで寝たとしても膝や足先が外を向き、自分の意思でそれを修正しようとしてもできません。一度目の治療
一度目の治療で腰痛は取り去れたのですが、腰の筋肉に左右差があり、踵に重心を置いた歩きでは早期の腰痛の再発が診られることは間違いの無いことです。
ですから両側下肢の整復施術後Dさんには腹臥位での背腰部の柔軟運動と、爪先歩行を指示しました。
爪先に重心を置いた歩きをすると、膝が外を向くことが無くなり、身体の自然なカーブを維持できるからです。
Dさんは一週間後こそ膝の完全伸展が不能でしたが、胸腰椎の飛び出しは少なく、次の来院時には膝の完全伸展が可能でした。
これなら早期の継続治療の終了が見込めると思い、次の来院日を二週間後としました。
二週間後の来院時で背腰部の柔軟性や良姿勢が維持されていたら、腰痛の再発の危険性が殆ど無くなるはずですので、当院での治療が終了できるはずでした。二週間後・・・再発
しかし、二週間後の来院時には背腰部が再び飛び出し、膝が仰向けで寝ていただいても伸ばしきれません。
「運動はちゃんとやってましたか?」と問う私に、「朝と夕だけですが」とお応えになりました。
「では爪先立ち歩行は?」と問う私に、「10日前ぐらいからできなくなりました」とおっしゃいます。指示した通りの運動になっていなかった
その後に再度筋肉の弛緩術と脊柱矯正、何種類かの運動法を繰り返し、ベット上での柔軟運動とフロアーでの爪先歩行を行なっていただきました。
それは難なく行えたのですが、次にDさんは驚くことをおっしゃいました。
「今はベッドでやりましたが、普段は立ったままやってます」とおっしゃるのでそれを実行していただくと、Dさんは足を揃え膝を曲げて背を反らすのです。
つまり背腰部の柔軟運動を行っているつもりが、膝をやや曲げて行なっているため、まるでベッド上でやるよりもよく反らせていると勘ちがいされていたようです。
このような動きをトリックモーションと言い、他の例としては肩関節の可動域に制限がある人が行うものがあります。
肩関節可動域に制限を有する人に「両腕が耳に着くまで上げてください)と指示します。
肩関節に柔軟性が維持できている人なら簡単なことですが、維持できない人は頭を下げて耳を上腕に近づけようとします。
このような行動をとる人は高齢者に多く、本人は「ほら、ちゃんとやれてるだろう」と思われてるようです。
Dさんは背腰部の柔軟性が乏しくなり、胸腰椎の後方への飛び出しを防ぐことができなくなり、姿勢のバランスをとるため膝が常に屈曲した状態を維持してしまったのです。
その事を指摘し、考えを改めていただいたのですが、通院期間が延びてしまったことは当然のことです。
しかしDさんはまだ若く、私はこのような行動をとられるとは思いもしませんでしたが、指示通りにしていただけたなら、もっと早く完治したことは間違いの無いことでしょう。まとめ
踵に重心を置いた歩きでは、仰臥位では足先が外を向き、下肢を捻った格好になります。
つまり、膝が完全伸展できないまま歩くことになるのです。
膝が常に屈曲したままだと、人の姿勢はバランスをとるため屈曲姿勢をとります。
人は膝を曲げたまま姿勢を正しくすると、当然後方に転倒してしまうため、自然に無自覚に背や腰を曲げるのです。
つまり背や腰(多くの場合腰)が常に曲がったままになるわけです。
背や腰が曲がったままだと、左右の脊柱起立筋が常に伸展を余儀なくされ、硬く張ってしまうために血液の供給が受けられ難くなります。
筋肉は緊張と弛緩を繰り返し、緊張時に力を発揮し、弛緩時に血液の供給を受けるのですが、筋肉が伸展したままだと緊張状態と同様になるわけです。
ですから左右の脊柱起立筋は前傾姿勢を支えるため、その力を発揮しようとしてもすぐに限界に達し、それを痛みとして頭脳に伝えるため姿勢維持が辛くなるのです。
以上のことでお判りだと思いますが、これは筋肉痛で、神経由来の痛みとは違い治療は簡単ですが、放置すれば神経由来の腰痛を併発することは間違いの無いことです。
Dさんは歩行や走行の悪癖が原因で膝関節が曲がったままになり、身体の前後のバランスをとるため腰を曲げて生活されていたようです。
それが植木鉢を移動させて悪化させ、初めて腰に異常を感じられたようでした。
それでもランニングはやめず毎日走っておられたようでしたが、背腰部の脊柱起立筋が限界を示し、腰痛として脳に異常を示したものでした。
腰痛の原因が腰にだけあるとお考えの人が多く、それを照明するため私はベット上で仰向けで寝ていただき、膝裏に隙間ができていることをご自覚していただいております。
「何も腰が痛くなる行動はやってないのに?」とお思いの人、一度仰向けで寝て膝を伸ばし、膝裏に隙間ができていないか確認してみてください。
もし上記のごとく膝裏に隙間ができていたなら、今度はご自分の履いておられる靴の裏をご覧ください。
多分、靴の外側の踵付近が擦れて減っているでしょう。
と言うことは間違いなく、「貴方の歩き方は破歩」と言うことになり、腰痛の原因が歩き方と言うことになります。
著者プロフィール

兼田 茂和
国家資格あん摩マッサージ指圧師保有。
日常的に抱えている慢性痛に対し、その痛みの原因を追究して根本を改善することで、痛みの軽減を目指します。日々、人の命を預かる重みを感じ、ひとりひとりに合った施術で、最後まで誠心誠意施術致します。
WEBサイトの営業電話はお断りしております。