- トップページ
- >
- 新着情報
治療に真剣に取り組んでいただけない患者様
- 2022年08月24日
- 先月までは稀に見る要因で、比較的治療が長期化した症例をご紹介してきました。
先月の症例は私の指導した運動をやめ、ご自分が考案した運動をされ、それがトリックモーションと呼ばれる無駄な運動だったと言うお話でした。
当然 正常な身体を取り戻すどころか、症状が悪化してしまい、結果として治療の長期化をきたしたと言う症例でした。
今回のお話は当院では一番多い、一般的に治療が長期化してしまったと言う典型的な症例です。
幾度も述べさせていただいておりますが、正常な身体では横から見るとアルファベットのSの字をしています。
つまりSの字の一番上が頚椎に相当し、段々前に迫り出す部が胸椎に当たります。
それで一番前に迫り出した部が腰椎に当たり、今度は後方に迫り出す部が骨盤と言うことです。
筋肉疲労以外で腰痛を生じた場合は、腰椎が逆の方向に飛び出していることが多く、これには椎間板ヘルニアも含まれます。
椎間板ヘルニアはご存知のように、脱髄した髄核と呼ばれる部が、後ろの脊髄を圧迫することで痛みや痺れなどを生じさせます。
がしかし、それ以外の腰痛でも腰椎の飛び出しが原因となります。
腰椎が後方に飛び出すと、直側の筋肉が過伸展を余儀なくされ、その状態が維持されることで筋肉に罹る負担を補いきれず痛みを感じるのです。
勿論 腰椎が正常だと、姿勢を正しくしているだけなら、直側の筋肉はそれほど筋力を発揮する必要も無く、睡眠時では充分な休養をとれるわけです。
しかし腰椎が後方に飛び出してしまえば、その人が睡眠中でも腰椎直側の筋肉は過伸展したままで、その筋肉は休養をとることができません。
その人が起床した際は幾らか腰痛が改善したように思えても、少し体を動かしただけで、再び腰痛に見舞われることはこれでお判りでしょう。
私が行なう施術には脊柱矯正と言うものがあり、異常に後方に飛び出した胸腰椎を正常化しようとするものですが、完全に矯正が果たされれば疼痛の軽減や消失も期待できます。
* 脊柱とは上から頚椎(首の骨 7個) 胸椎(背中の骨 12個) 腰椎(腰の骨 5個) 仙骨(骨盤の一部 5個)から構成されております。
治療の方法はこれまで幾度も述べさせていただいておりますので、今回は省略させていただきますが、ご興味をお持ちなら以前の原稿をお読みください。
今回ご紹介する症例は完治が見込めず、治療が長期化する典型的なパターンです。実例:仕事を優先した結果完治に期間を要した人
Wさん(当時55歳)は建設作業員で、平成最後の患者さんでした。
仕事によると思われる腰痛を感じ、地元の整形外科クリニックを受診されたのですが、レントゲン検査でL3の腰部椎間板ヘルニアと診断されました。
クリニックでは市の総合病院への紹介状を書いてもらい、後日診察を受けられたのでしたが手術の必要性を説かれたようでした。
体にメスを入れるのを嫌がったWさんが当院を訪れられたのは、それから暫くしての平成最後の日となった夕方でした。
主訴は腰痛に加え左大腿内側と両側前側の痛みでしたが、触診ではやはり完全に身体の自然なカーブが失われ、特にL3と4の著しい飛び出しが触知できました。
それ以外にも上位胸椎と上位腰椎も飛び出し、当然ですが、胸腰椎の柔軟性は完全に失われています。
脊柱直側の筋肉はと言うと、胸腰椎が後方に飛び出した前屈姿勢が永かったためか、萎縮が見られてまるで紐のように細く触知できます。
ベッド上で仰臥位で寝ていただくと、両側膝関節の完全伸展が不能で、特に左膝関節の裏は私の拳が楽々入るほどの隙間を有してます。
お尻をベッドに着けるのも痛いらしく、Wさんは小さくうめき声を出されました。
初回の治療で上位から下位(TH10付近)の胸椎の整復と股関節の完全伸展と約90%程度までの膝関節の可動域が回復できましたが、腰椎は殆ど改善できませんでした。
やっと腰椎が真っ直ぐまで改善できたのは三度目の来院時で、その頃は下肢の関節可動域は完全に回復を見てました。
Wさんがそれまで感じておられた痛みの殆どが消えていたようで、「これで治ったんですか?」とお尋ねになられましたが、まだまだ完治とはいえません。
まだ腰椎が自然なカーブを取り戻せていませんから、再び腰椎が後方に飛び出すことも、脱髄した髄核の圧迫から脊髄を離すこともできていません。
おそらくWさんは腰椎の飛び出しが改善し、直側の筋肉の伸展に余裕ができたことで、筋肉痛が改善したことを「もう治ったのでは?」と思われたようです。
しかしこの状態では現在のお仕事中に腰痛を再発させられることは明確で、更なる通院の必要性を説き、次回のご予約をいただいて帰宅していただきました。
ところが予約当日、「仕事が忙しいから、後日予約の電話を入れます」とお電話をいただきました。
その後一ヶ月が過ぎる頃、「また腰や足が痛くなった」と受診のお電話をいただき、来院されて触診してみれば完全にもとの悪い状態に戻ってます。
特に殿部や下肢は以前よりも萎縮傾向が見られ、以前よりも無理に身体を酷使されたようです。
「まだ治って無いと言ったじゃァないですか?」とお伝えすると、Wさんは「そんなに永く仕事を休めない!」とおっしゃいます。
今回、三度目の来院時の状態にまでに回復したのはその翌週でしたが、「仕事を休めない」との意向でしたので仕方なく、10日から二週間の間で継続治療することにしました。
身体の自然なカーブが失われたまま、騙し騙し過ごしていただき、まとまった休暇をとれる年末年始の間で治療を重ね、完全ではありませんが胸腰椎が前腕できるまでになりました。
この時点から背腰部の柔軟運動を行っていただきたかったのですが、Wさんは消極的な返事しかされません。
それどころか来院頻度が下がり、今度は「ゴールデンウィーク中で治してほしい」とおっしゃるのですが、「それでも完治には至らないでしょう」とお伝えしました。
すると「構わない」とお応えになり、現在まで少し改善できても仕事で症状を再発させられ現在に至っております。まとめ
Wさんは建設業と言っても重機オペレーターで、毎日シートに座って前傾姿勢で重機を操っておられます。
腰痛の原因は筋肉由来の腰痛が主で、レントゲンで見られた脱髄による腰痛は殆ど感じておられないようでした。
休憩ごとに重機から降り、背を伸ばしたり首や肩の運動を行ってもらっているのですが筋肉の乏しいWさんの体は、どうしても下位胸椎と全ての腰椎が後方に飛び出してしまいます。
足の痛みの原因は姿勢が前傾したからで、無意識にバランスをとるため膝が曲がってしまい、ハムストリングスと呼ばれる諸筋肉が過緊張してしまうからでした。
現在のお仕事の宿命とも言えるのですが、身体の自然なカーブが取り戻せ、多少でも直側の筋肉が発達すれば柔軟性が得られて腰痛を再発させられる頻度が下がるはずです。
仮に腰部椎間板ヘルニアが悪化し、神経由来の腰痛を強く感じられたとしても、腰椎が元の状態に戻れば脊髄への髄核の圧迫も軽減するでしょう。
それには或程度治療期間を要するのですが、通院が必要が無くなるまで休暇をとってもらわねばなりませんが、どうしてもその気になっていただけません。
幸いにして現在に至るまで症状を重篤化させることも無く過ごされてきましたが、いつその危険が及ぶか判りません。
仕事を理由に治療を中断されたり、完治に期間を要した人は少なくありませんが、これは価値観の違いなのでしょうか?。
著者プロフィール

兼田 茂和
国家資格あん摩マッサージ指圧師保有。
日常的に抱えている慢性痛に対し、その痛みの原因を追究して根本を改善することで、痛みの軽減を目指します。日々、人の命を預かる重みを感じ、ひとりひとりに合った施術で、最後まで誠心誠意施術致します。
WEBサイトの営業電話はお断りしております。