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改善のための指示を忘れて悪癖が治らない人のお話
- 2022年09月16日
- 今回も治療が長期化する典型的なパターンシリーズです。
先月はお仕事を優先して症状の完治は目指さず、症状の再発を繰り返しながら騙し騙し腰痛を堪え、次の休暇を取れるまで来院されない人のお話をご紹介しました。
今回のお話も身体の自然なカーブが失われ、鋭いとは言えないまでも慢性的な腰痛を感じていた人の症例です。破歩(ガニ股)が及ぼす腰への影響
身体の自然なカーブが失われる原因の一つに歩き方が問題になる事があります。
破歩と呼ばれる歩き方で、一般に[ガニ股] 医学用語では外反股と呼ばれる歩行もその一つです。
膝や足先が外を向いた状態で、小指や踵の外側に重心をかける歩き方をされます。
この歩行では大股で歩くことが難しく、左右への体重移動が余儀なくされることで揺れながら歩いているように見えます。
爪先で地面を蹴ることが無い歩きですので、足を引き擦ることになり、仰臥位では両側の股関節が外に向き、膝関節は完全伸展できずに曲がったままになります。
当然足先が小指側が下になる、足首(足関節)の捻れた格好になります。
これで「気をつけ」の姿勢をとると、本当なら上半身が後方に倒れるはずですが、人は無意識に転倒を避けるため背や腰を屈曲させてバランスを取ります。
これで身体の自然なカーブが崩ないはずは無く、ガニ股の人はこの姿勢が固定した状態を維持してしまうことになります。
つまり常に背や腰が後方に飛び出すことを余儀なくされるのです。
ですから患者さんが「腰が痛い」と言って来院されても、腰だけ治療したのでは早期のうちに腰痛が再発してしまうのはご理解いただけるのではないでしょうか?。実例:悪癖が直らず完治に期間を要した人
Dさん(当時六十歳)は県庁職員を退職され、以後は県関連施設で事務員をされる予定でした。
次のお仕事の出勤は毎日ではなかったようですが、「仕事に支障をきたしては」と懸案だった腰痛の治療を当院に依頼されました。
県庁職員だった頃にも腰痛は感じておられたのですが、市内のクリニックや総合病院を受診しても湿布の処方や鎮痛剤の投与だけで、根本的な治療はなされなかったようです。
初診時の触診では酷いガニ股で、足の小指の外側がペタンとベットに貼り付くほど足先が外を向いてます。
背腰部はと言うと全ての胸腰椎、特に中位胸椎から全ての腰椎が後方に飛び出してました。
それで打腱槌で腰椎を叩いても、神経痛様の所見は見つかりませんでしたので、筋肉疲労性の腰痛と判明しました。
しかしその筋肉はと言うと、細く萎縮し、私の指で横方向へ圧を加えると「コリコリ」と音を立てます。
それは永年背や腰が曲がったまま、一度も背を正しくしなかったことを証明するもので、治療の長期化を予想することを充分に示すものです。
正常な身体のカーブとまでは言えませんが、二本の指で抓めるほど飛び出していた腰椎が、一本の指先で触れるのがやっとのところまでに整復ができたのは一ヵ月後でした。
この頃には腰痛は殆ど消え、机上の仕事中でも腰部の違和感すら感じられなくなったようでした。
しかし諸悪の原因であるガニ股を正常に戻さねば、この先胸腰椎だけ整復しても維持ができません。
ですから背腰部と同時に下肢の征服も試みたのですが、股関節の整復度は90%程度。
膝関節の整復度は95%程度で、硬く過緊張した大腿四頭筋の外側広筋がなかなか緩んでくれません。
Dさんには足の拇指の付け根に体重を懸けて歩くようにと指示していたのですが、施術を行なった日は気をつけていても、翌朝起床して着替えする頃には忘れていたようでした。
そのようなことで次の来院時では再び足先が外を向き、ズリッズリッ音を立てて私の前に来られます。
「朝起きて気がついたらこんなことになってるんです」と、重心を小指側に懸ける悪癖が直せない事を嘆かれます。
幾度か来院を繰り返され、調子が良いときには股関節が95%程度、膝関節がほぼ100%の整復度に至ることはありましたが、それが中々持続できません。
Dさんの希望で下肢の治療よりも背腰部の治療を優先し、頸肩背部から腰殿部までが自然なカーブが取り戻せた時点で継続治療を終了することになりました。
当然 重心が小指側に罹る悪癖が完全に直ったわけではないので、当院を受診される前の姿勢に戻る危険性があります。まとめ
Dさんの継続治療終了時は胸腰椎の整復度がほぼ100%で、下肢の状態もほぼ正常にまでにはなりました。
しかしベッド上で仰臥位姿勢では、油断されるのか足先が外を向き、「ほらほら外を向いてますよ」と私が指摘するまで気がつかれないことがあります。
これは大腿四頭筋の外側の諸筋が内側の諸筋よりも緊張している証拠で、時々私の指示を忘れていることを示すものです。
生真面目で特に関西圏外から通院されている人なら、「何度も通院できない」とお考えになられ、早い人なら下肢の格好が正常に戻った時点でその状態を維持される人もおられます。
又、腰痛よりも膝関節痛のほうが強い痛みを生じている人ではもっと努力され、それまで履いていた靴や履物を廃棄され、新しい物に新調されます。
つまり悪癖の着いた履物では、正常なら爪先が磨り減るところが足の外側、殊に踵の外側が摩滅しているからで、そんな物を履いていたら悪癖が直り難いからです。
それほど痛みを感じておられない人では、いくら私が「拇指の付け根に体重を懸けて歩いてください」と指示しても、「すぐ忘れるんです」と言い訳されます。
継続治療を終了できない人の多くは近隣の人が多く、腰痛の再発を見てからついでに下肢を矯正すると言うパターンを繰り返されます。
以上のことでお判りだと思いますが、胸腰椎や下肢の格好を正常化するのは容易ですが、原因となる歩き方を矯正し、それを維持していただく努力が必要なんです。
著者プロフィール

兼田 茂和
国家資格あん摩マッサージ指圧師保有。
日常的に抱えている慢性痛に対し、その痛みの原因を追究して根本を改善することで、痛みの軽減を目指します。日々、人の命を預かる重みを感じ、ひとりひとりに合った施術で、最後まで誠心誠意施術致します。
WEBサイトの営業電話はお断りしております。