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完治に期間を要する典型的なパターン ⑦
- 2023年02月10日
- 昨年の後半から治療が長期化する典型的なパターンの実例をご紹介してきました。
又、昨秋からは当院を受診するまでに他の医療機関を受診し、誤った治療法や誤診により完治に至らず、結果無駄に期間を要してしまわれた人の症例をご紹介しました。
前回は身体の後側で局在性の乏しい痛みのため整形外科を受診し、種々の検査でも異常が見つからず、最終的に内科疾患を疑われた人の症例でした。
今回のお話は数年前から足の違和感を感じておられ、年を経て症状が悪化したため整形外科を受診し、医師から不思議なことを告げられて困惑された人の症例です。
Sさん五十七歳は委託で森林管理のお仕事をされる元自衛官で、現在のお仕事に就かれて暫くして、起床時に何故だか足の動きに異変があるのを感じられました。
異変とは、ベットから立ち上がるのは普通に起きられるのでしたが、片足を前に踏み出そうとしても足が重く、以前より力を要すると言うことでした。
しかしそれ以上の異変は感じられず、以後二年ほど何とか過ごされてこられたのでしたが或る日、症状が悪化しているのに気がつかれました。
と言うのは歩行中にまるで太腿が痙攣が起こったように動かせなくなり、「何なんだろう?」と足を摩ったりしていたら症状が消え、再び普通に歩けるのでした。
日を経過するほどその頻度が上がり、不安を感じられたSさんは整形外科を受診されました。
病院ではレントゲン検査に加え腰部のCTも撮られたようでしたが、医師はその結果の画像を見つめ「歳をとったらいろんな症状が出ますから上手に付き合いなさい」と不思議なことを告げたようです。
結果、鎮痛剤の処方を受けて帰宅されたのでしたが、「痛みも無いのに何故?」とSさんは不思議に感じられたようです。
更に年を経て足が動き難くなったため、足を摩る頻度が上がり「何とかならないか?」と当院を受診されました。
私は問診の結果から動脈の虚血状態を疑い、下着姿のSさんの下肢の諸動脈に触れ、動脈の拍動が薄いことを触知しました。
「元は自衛官だったのに何故?」と思った私がその事を告げ、Sさんのお応えを聞いて納得せざるをえませんでした。
Sさんの現役時代のお仕事は主に経理業務だったようで、だからと言って訓練は避けられず、早く走ったり、高く 或いは遠くに飛んだりするのが著しく苦手だったようです。
つまり現役時代から下肢の異常を感じておられ、退官されてからも足に負担をかける生活習慣を避けられてこられたことが予想できます。
「だったら何故森林管理の仕事を?」とも思いましたが、治療を施せねば、この先症状が悪化することは避けられないでしょう。
治療は運動法を繰り返しながらの揉捏法を、大腿動脈の走行から膝窩動脈の拍動が触れるまで行い、最終的に正常な足背動脈の拍動が触知できるまで行ないました。
ベット上でSさんは「足全体がホカホカする」とおっしゃい、それから膝を上げられて「足が軽い!」と驚かれたようでした。まとめ:
患者さん本人が自覚する症状は人それぞれで、下肢の症状は足が重たく感じたり、大きく踏み出そうとしたりして痛みを感じたりと言うことが挙げられます。
普通に足が動かせないのですから、Sさんご本人がそれを「足が痙攣する」と感じられても無理はありません。
例えば運動習慣を持たない人が比較的低い登山をした翌日、足がパンパンに張って動かし難いことがあります。
当然無理して歩こうとすると下肢の諸筋肉に痛みが生じ、苦痛を感じながらの歩行になってしまいます。
ところが運動習慣を持った人なら、多少は下肢の疲労感を感じてもほぼ正常な歩行が可能でしょう。
Sさんの場合、現役の自衛官だった頃は業務として運動習慣?を持たれておられました。
ですからその頃には多少筋肉疲労を感じることがあっても、足が動かし難くなるような痛みを感じることは少なかったと予想できます。
退役前にはその労役が緩和されたようで、ハードな身体活動を余儀なくされる頻度が下がったのではないでしょうか?
Sさんの下肢の血流状態が先天的に正常な人より劣っていたのかは判明しませんが、退官された頃には同年代の人より血流に著しい問題があったように考えられます。
大腿動脈の走行部に異常な筋肉の過緊張があり、それ以下の膝窩動脈→前脛骨動脈・後脛骨動脈→足背動脈・足底動脈に虚血状態を引き起こしたようです。
ですが整形外科の医師が、Sさんの下肢の状態をご本人の言うように[痙攣]と思い込んだのが完治に期間を要してしまった原因でしょう。
医師はSさんの言葉を鵜呑みし、神経疾患と判断して腰部椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などを疑い、種々の検査を行なったと考えられます。
しかし明確な異常を見つけ出せず、苦し紛れ?に前述の言葉を放ったのではないでしょうか?
Sさんには血流改善が図れたのを確認できてから踏み台運動を指示し、それが確実に行なえているならと条件をつけ、治療を終了しました。
以来、Sさんが再発を訴えて来られることはありません。
原因を一言で言うと、現役自衛官の頃に下肢の血流を阻害する筋肉の凝りがあったのではと考えられます。
つまり運動後のケアが足らず、それを放置していたため下肢の虚血状態が慢性化し、歩行をやめて足を摩ったりして少し改善したと言うことでしょう。
それでも正常な歩行ができず、足を引き擦る歩行で症状が悪化したのではないでしょうか。
何にしても当該医師の言葉通り症状に上手に付き合おうとしても、ご本人の努力だけでは最悪の場合、杖に頼らねばならなかったかもしれません。
Sさんの下肢の血流が改善し、それを維持するために踏み台運動を指示したのは以上の様なことです。
著者プロフィール

兼田 茂和
国家資格あん摩マッサージ指圧師保有。
日常的に抱えている慢性痛に対し、その痛みの原因を追究して根本を改善することで、痛みの軽減を目指します。日々、人の命を預かる重みを感じ、ひとりひとりに合った施術で、最後まで誠心誠意施術致します。
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