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慢性腰痛とギックリ腰Ⅱ
- 2023年09月01日
- 先月から腰痛を発症させられる最もポピュラーな疾患として、ギックリ腰の症例をご紹介しております。
先月は慢性的に腰痛を感じられていた人が、炊事場で食器を取り出そうと腰を屈めた瞬間「グキッ」と鋭い腰痛が発生し、そのまま動けなくなってしまわれ、往生された症例をご紹介しました。
その人は机上のお仕事のため前傾姿勢が常となり、身体の自然なカーブが失われ、やがて弱体化した筋肉のため骨の飛び出しが防げず、コルセットが手放せなくなったのでした。
当院の治療で身体の自然なカーブが取り戻せたことで、現在は腰痛防止体操を行うことで再発防止を図られておられますが、結局約6年間も腰痛を我慢されていたことになります。
今回ご紹介する症例も慢性的な腰痛を感じられていた人が、自己流の治療で治そうとされたのですが、うまくいかず永年我慢されていたと言うお話です。実例: 夕方になると立っていられない
Bさん当時四十一歳は地方公務員で、転勤で当市に赴任なされました。
当院の看板を見かけられ、「一度診てもらおう」とインターネットを検索され、電話番号を調べた後、ご予約のお電話をいただきました。
Bさんの初診時の歩き方は極普通で、「何処が悪いのか」と思うほどスタスタ歩いて診察椅子に座られました。
以下は問診時で得たBさんの情報です。
若い頃から身体を動かすことが好きで、学生時代から少し前まで趣味の登山や剣道をされているようです。
ですから体力には自信があったようでしたが、三十歳の頃、起床時に腰の辺りにズンと重量感のような軽い腰痛を感じられたようでした。
数日後に更に熱間のようなものを感じられたようでしたが、自己流の治療としてホットカーペットに仰臥位姿勢で寝て過ごされたようでした。
効能はその頃までは有効だったようで、日常生活や仕事にはそれほど差障りが無く、数年を過ごされてきたようでした。
更に異常を感じられるようになったのは当地に赴任される前で、発症のきっかけは剣道大会だったようです。
試合後数時間は異常は無く、道具を抱えてバスの駐車場まで普通に歩いて乗車されたのでしたが、座席に座ってから局在性の乏しい背腰部痛を感じられました。
ですからBさんは在宅中はホットカーペットで寝て、職務中は市販の湿布を貼って過ごされておられました。それの効果が減退したのは転勤を告知された頃です。
出勤時にはそれほどでもなかった痛みが、昼食を終える頃からジワジワと再発し、夕刻時には背を真っ直ぐにできないほど痛みを感じ、立っていられないまでになられました。
それでも座って机上のお仕事をしていたら痛みが軽減したようでしたが、現状に不安を感じられないわけはありません。
そんな身体で転勤されてこられたのですが、或る日当地を訪れられ、当院の看板を見かけられて来院されたのです。
触診ではBさんの胸腰椎は自然なカーブが失われ、歩行時には歩幅を狭くして歩かれていたため、両側股関節の可動域が狭まり、背腰部と殿部、大腿部の諸筋の過緊張は著しいものでした。
「これでホットカーペットで寝られましたか?」と問う私に、Bさんは「両膝を立てなければ寝られませんでした」とおっしゃいます。
以上のことからBさんの背腰部は前傾氏、姿勢の保持のため股関節と膝関節にやや屈曲が余儀なくされ、それが常態化したため身体の自然なカーブが失われたようです。
治療は側臥位姿勢になっていただき、大殿筋とハムストリングスの諸筋の過緊張を緩め、更に大腿四頭筋の緊張緩和を図ることで、股関節の可動域の回復を見ました。
以上のことで腹臥位姿勢が可能になり、背腰部の治療が可能になりました。
酷いものではありませんが、TH9辺りからS2までが後方に飛び出し、直側の脊柱起立筋は硬く、広背筋に至っては圧痛点が散在しています。
幾度かの揉捏法で過緊張している箇所を緩め、上位胸椎から脊柱矯正を施し、下位腰椎の矯正が図れた頃には、来院時よりほぼ30~40%の整復が図れました。
結果、Bさんの痛みの感じ方は軽減し、仕事を終えた夕刻になってもほぼ普通の歩行が可能になりました。
その後、5回目の来院で身体の自然なカーブが取り戻せたことで局在性の乏しい背腰部痛が消え、更に三十歳の頃から感じておられた重量感や熱間の消退も見ました。まとめ
まず考えられる腰痛初期の状態は、自覚症状から椎間孔で極僅かに神経の圧迫が生じたと推察できます。
椎間孔とは:腰の骨のことを腰椎と言うのですが、腰部には腰椎が5個存在し、腰椎と腰椎の関節を椎間関節と言います。
上下の腰椎の隙間を椎間孔と言い、それは左右に存在して神経の出口となっています。
椎間関節の隙間である椎間孔は、前に椎間板が存在するため前方は大きく開き、後方は骨同士の関節になっていますので極めて隙間が狭くなっています。
何故神経由来の痛みが生じたのでしょう。
正常なら広い隙間を神経が通過しているのですが、何らかの身体運動により腰部に捩れが生じた際、一方の神経は狭い隙間に近づき、運が悪ければ挟まって圧力を受けてしまいます。
これが神経性腰痛のメカニズムの一例です。
Bさんは不幸にもやや狭まった椎間孔の骨に神経線維が挟まれ、軽度ではありますが、神経線維が上下の骨に噛まれた状態が常態化してしまったことで腰痛を起されたと考えられます。
熱間を伴う痛みは筋肉疲労性由来の痛みが考えられ、ホットカーペットで患部を暖めれば痛みが軽減、或いは消失したことで証明できます。
更に不幸が重なり、剣道の試合中に身体を捻った際、圧迫されていた神経線維が更に椎間孔の狭いところに入ってしまわれたのか、若しくは噛まれた神経線維に強い圧力が加わってしまったのでしょう。
上記のような状態は身体の自然なカーブを取り戻すことで改善が見られますが、状態が長期化しますと骨同士の癒着が生じますので、この場合は完治が困難となります。
つまり整復が困難と言うことになるのですが、諸筋肉の緊張緩和を図ることで痛みの軽減は可能です。
Bさんの場合はお仕事柄、身体活動が活発で、しかもホットカーペットで患部を暖めようとされたことで背腰部や殿部が平らに押し付けられたことで、自然なカーブが失われずに済んだのです。
通常17年も腰痛に悩まされ、歩行時に前傾が余儀なくされていた人が完全整復が適った症例は珍しいのではないでしょうか?
著者プロフィール

兼田 茂和
国家資格あん摩マッサージ指圧師保有。
日常的に抱えている慢性痛に対し、その痛みの原因を追究して根本を改善することで、痛みの軽減を目指します。日々、人の命を預かる重みを感じ、ひとりひとりに合った施術で、最後まで誠心誠意施術致します。
WEBサイトの営業電話はお断りしております。