病院に行くほどではないけれど３　：　口の片側が開き難い

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2024年07月01日: 先月からのテーマとして、病院を受診するほどでも無いような痛みや、日常ちょっとした不自由を日頃から感じておられた人の症例をご紹介させていただいております。
先月は若い女性が日頃から利き腕側の肩や腕に異常を感じておられ、洗髪や下着の装着に苦労されておられた人のお話でした。
その人は特徴的な身体をされておられ、それが肩凝りの原因でしたが、更に症状を悪化させてしまったのが肩凝りを自覚できなかったと言うことです。
首や肩、背中に張り感や疼きを感じられたなら、早期のうちなら湿布を貼ったり日頃の体操などで悪化が防げたでしょう。
結局私の施術で一応の完治を見ましたが、再発予防のための体操が不可欠なのは周知のとおりでしょう。
さて今回ご紹介する症例は最近になって口の一方が開け難く、恥ずかしさのあまりマスクをせねば他人と話ができず、家族からも「それ治らないの？」と言われていた人のお話です。

実例：喋り難い＋人前で笑えない

その人から受診希望のお電話をいただいたのは去年の歳末でした。
依頼された内容は「口の一方が開け難いので診てほしい」と言うものでした。
お仕事の休暇中を御希望なされたので、私は「正月の三が日の何れかはいかが？」とお伝えすると、「えっ、正月でもよろしいんですか？」とおっしゃいました。
当院では施術は私一人で行なっている都合上、「一日で引き受けられるキャパが少ないため、不定休で年末年始でも休めないのです」とお伝えしました。
「では元旦翌日の２日にお願いします」と受診を依頼されました。
以上の会話で気がついたのは、言葉の初語が不明瞭で、口に何か銜えているような感じで聞こえました。
患者は琵琶湖対岸の町にお住まいのＴさん三十一歳女性で、お仕事は看護士でした。
当然仕事上医師と話すこともあり、ご自分の身体状況を相談すると「顎関節症」と意図も無く診断され、「日にち薬だから、ほっといても治る」と告げられたようです。
しかしＴさんは「顎はちゃんと開けられてるのに、皮膚が突っ張って口が開けられないのが顎関節症なの？」と疑問を感じ、色々検索されて当院に白羽の矢を立てられたようです。

診察結果と治療

触診で最初に感じたことはＴさんは酷い肩凝り症で、両側頸部・右肩上部・同背部の諸筋が堅く過緊張していることでした。
当然頸部の関節可動域は制限され、それを指摘するとご本人はあまり気にしておられないようでした。
先月の患者さん同様、Ｔさんも肩凝りを感じ難い人のようで、私が頸肩部の過緊張した筋肉に指で圧を加えるまで気がつかれませんでした。
「押されて痛いと言うことは凝っていると言うことですか？」とおっしゃるのです。
それで頸肩背部を幾つかの揉捏法で緩ませても、首が良く動くようになっただけでご本人は楽になったのかどうかは判然としないようでした。
施術の最中に気がついたのは頚椎のＣ２の棘突起がやや左に偏り、皮膚直下の筋肉に異常な張りを生じていることでした。

頚椎とは

頸部の骨を頚椎と言い、頚椎は全部で７個存在し、上端をＣ１下端をＣ７と呼びます。
棘突起とは、頚椎の後方にある突出した部分を棘突起と言います。
当然棘突起には筋肉が起始・停止していますので、上下の頚椎同士に筋肉が付着することで頸部の動作を担うことができるのです。
つまりＴさんの頸部の第二番目の頚椎が一つだけ、捩れを生じているのでした。
私は更に頸部に揉捏法を加え、Ｃ２の捩れを整復したとたんＴさんが「口の引っ張られた感じが消えました」とおっしゃいました。
どうやら頚椎の捩れが原因だったようで、頸部の筋肉が凝り固まって過緊張氏、頸部の捻り動作でＣ２だけが元に戻らなかったことが原因だったようです。
前回にも述べさせていただきましたが、世の中には肩凝りが感じられない人がおられるのです。「肩凝りが感じられなくて良いな」と思わないでください。
上記の症状以外に筋肉の凝りは、様々な障害を生じさせます。筋肉の凝りでは血流を障害させることがあり、片頭痛と呼ばれる症状では頭部を栄養する血流が滞ることで起こり、眼や耳の障害の原因にもなり得るのです。