滋賀県、腰痛治療

新着情報

肩こりが原因の顔面神経麻痺を治療した実例

2021年06月28日
昨年11月の記事でご紹介したように、肩こり由来の疾患で顔面の諸機関に障害を起こすことがあります。
眼のピントが合わなくなったり、難聴をきたす原因とメカニズムをその際にご紹介しました。

何れの疾患さんも頭部に上行する血流が悪くなった結果で、血流が悪くなる原因として肩こりが大半を占めます。
以前ご紹介した症状以外に、稀に表情筋にも悪影響をもたらす場合があります。

多くの初期症状として一方の上瞼や下唇の痙攣が挙げられます。
やがて顔面左右どちらかの表情筋に更なる異常が出て、痛みも無いのに眼が開け難くなったり、顎に異常はないのに片方の口角が開け難くなったりします。

このような症状を「顔面神経麻痺」といいます。
そこで今回は肩こりが原因の顔面神経麻痺を治療した実例をご紹介します。

肩こりが原因の顔面神経麻痺:実例

長浜市在住のTさんは41歳の男性で、主に事務作業に従事されてました。
普段は体調に特に異変を感じることもなく、休日は仲間と野球や冬はスキーを楽しまれてました。

初めて異変を感じたのは食事中で、箸で食べ物を口に運んだ際に、ポロポロと食べ物をこぼすことがあったそうです。
その時気がついたのは口の右側に比べ、左側の口角が開け難くなっているということでした。

そして日をおかずに、今度は下唇左側の痙攣が止まらなくなりました。
同時に唾液が同側の口内歯茎付近にたまり、唾を頻繁に飲み込むことが常になりました。

その後整形外科を受診されるのですが、そのきっかけは職場で窓口の向こうから声をかけられ、対応しようと相手の人に顔向けた瞬間に「ギョッ!」とされたことでした。
ご自分では気がつかれてなかったのでしたが、唇が震えている側の瞼も右眼に比べ開きが少ないようでした。

整形外科では「顔面神経に問題があるのでは」と言う医師の診断で、脳の異常と診断されました。
脳の検査が必要ということで、整形外科で紹介状を書いてもらい、大学病院を受診する事になりました。

ところが大学病院の検査では脳の異常は見つからず、脳に達する血流の異常と診断されました。
「これはまだ病院が扱う疾患ではない」と言う言葉に途方にくれたTさんは、普段から肩こりなどは全く感じておられなかったため、病院以外の治療の選択肢に困りました。

肩こりが原因の顔面神経麻痺:当院での治療例


職場の人のご紹介で当院を訪れられたのは、大学病院を受診された週の日曜日でした。
肩こりが自覚できないTさんの症状は顔面だけにとどまりません。

首から背中にかけての諸筋肉のこりは勿論、両肩甲骨周辺の諸筋肉は隣接する筋肉同士が癒着して腫れ上がり、肩関節の可動域を大きく狭めています。
肘が肩の高さまでしか上がらず、背に腕をまわそうとしても体幹の横までしか動かせませんでした。

勿論バンザイの姿勢もできず、日常生活でも不自由を感じるはずですが、本人は全く気づいていない状態でした。

幾つかの揉捏法や按捏法で筋肉の緊張緩和を図り、血流の回復が図れたのは治療を開始して40分ほど経過したときでした。

ベッドから立ち上がってもらい、左肩関節をまわしたり同側の背を捻って可動域が回復したことを確認してもらったのですが、本人は回復を実感できないようでした。
肩関節周辺や背中の諸筋肉が緩み、突っ張り感や背の重ダルさが消えたはずですが、「何も変らない」とおっしゃるのです。

ですが、それまで顔面以外に身体の異変を感じていたわけではなかったので、この反応は無理もありません。
それでも腕が背にまわせたり、顔の横に肘を着けられるようになったことで、良い状態になっていることにはご納得いただけ、次回のご予約をいただいてお帰りになられました。

「止まった!止まった!」とTさんがお喜びになられたのは2度目の来院で、一方の頸部の治療を終えて体位変換をお願いしたときでした。
「鏡はありませんか?」とおっしゃるので更衣室にご案内し、鏡を見ながらご自分の顔を撫でて再び「止まった!」と声を発せられました。

同時に眼の見え方も良くなったとおっしゃっていました。
2度目の施術前のTさんの頸部は異常に腫れ上がっていて、硬く過緊張してたのですが、唇の震えが止まった頃はほとんど正常に近い状態に戻っていました。

まとめ

Tさんの顔面に表れた疾患は頭脳由来の疾患でした。
原因は頭脳に栄養を届ける血管の血流が悪くなっていたことで、とくに橋菱形窩(キョウリョウケイカ)の血流低下で見られます。

私は模型しか見てませんが、本当に橋があって、菱型の部位が存在するのです。
橋菱形窩で見られる神経には、「三叉神経・外転神経・顔面神経・内耳神経」がありますが、詳細は文末でご説明いたします。

口周囲の異変は顔面神経、眼の異常は外転神経の影響でした。
頸部の血流が回復したことで、ゆっくりと当該部の栄養が吸収され、顔に表れた異変が正常化されました。

Tさんは趣味で野球やスキーをされてましたが、腕や肩の動きが悪くなったことに気がつかれず、ご自分が肩こりを起こしていることにも気づいていませんでした。
それどころか「肩こりってどうなるの?」とお考えだったようです。

肩こりを自覚しづらい人でも、腕を完全挙上すれば肩こりを自覚できる可能性が高いです。
しかし普段の生活となると洗濯物を干すとか、ラジオ体操するなど腕を完全挙上する場合は限られます。

そのため肩こりを自覚しづらい人は、そもそも肩こりになっていることに気づかないことが多いです。
なのでもしご自分の関節可動域が狭まっていると感じた場合は、「歳のせい」などと納得するのではなく肩こりなどの関節可動に関わる筋肉の異常とお考えください。

この記事を多くの人に見てもらいたいのですが、もし偶然でもお読みいただけたなら、ご自分の関節可動域を若い頃とどう違うかお試しくださると、筋肉のこりがわかるでしょう。
繰り返しになりますが若い頃と比べ、頸肩背部諸関節の可動域が狭くなったと感じたなら、それは間違いなく[肩こり]です!。

補足:橋菱形窩に見られる神経

・三叉神経
第1枝=眼神経・第2枝=上顎神経・第3枝=下顎神経の三本の枝に分かれます。
① 眼神経(知覚性)
眼窩に入り前頭部・眼球・鼻腔・涙腺などに分布し、その知覚を司り、(痛み 触感 温度管などの皮膚感覚)を受領します。
② 上顎神経(知覚性)
眼の下から上振にかけての皮膚・側頭部の皮膚・上顎歯槽に分布し、それらの知覚を司ります。
③ 下顎神経(運動性、知覚性)
知覚線維は側頭部から下顎にかけての皮膚と粘膜・下顎歯槽・鼓膜 内耳道・及び舌の前3分の2などに分布し、それらの知覚を司ります。
又運動線維は咀嚼筋など(鼓膜張筋)に分布します。

・外転神経(運動性)
眼窩に入り眼筋(外側直筋)に分布し、眼球を外転(外向き)させます。

・顔面神経(運動性、味覚、副交感性)
顔の表情運動や、舌の前方3分の2の味覚を支配する神経です。
表情筋(眼輪筋、口輪筋、頬筋、笑筋、広頚筋)などに分布するものは運動神経であり、舌に分布するものは知覚神経です。
副交感性とは、感情により涙を出したり、顎下腺と舌下腺を支配したりして唾液の分泌を調節します。

・内耳神経(聴覚、平行覚)
聴覚は蝸牛神経によって、平行感覚は前庭神経によって脳に伝えられます。
そのため橋菱形窩に異常が起きれば上記の機能が失われたり、或いは過剰反応をきたすのです。

Tさんの顔面の症状は顔面神経と外転神経由来の症状だけでしたが、治療が遅れれば、更に多くの症状を引き起こしたはずです。

著者プロフィール

プロフィール画像

兼田 茂和

国家資格あん摩マッサージ指圧師保有。
日常的に抱えている慢性痛に対し、その痛みの原因を追究して根本を改善することで、痛みの軽減を目指します。日々、人の命を預かる重みを感じ、ひとりひとりに合った施術で、最後まで誠心誠意施術致します。

お気軽にお問い合わせください tel:090-9217-2959 WEBサイトの営業電話はお断りしております。

  • 腰痛の原因になる歩き方

当院のご案内

兼田治療院
〒520-1111
滋賀県高島市鴨(宿鴨)2191番地
その痛み諦めないで。兼田治療院へご相談ください!
  • 滋賀県で腰痛治療やヘルニア改善を専門におこなっている当院では
    肩の痛みや膝・関節の痛みなど慢性痛の緩和を目的にマッサージ施術しております。
  • tel:090-9217-2959 営業時間  8:30~21:00 不定休 時間外受付もご相談下さいWEBサイトの営業電話はお断りしております。

ページの先頭へ