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効果が期待できない治療を病院で続けた人
- 2022年12月02日
- 先月から、当院を受診される前に他の医療機関で治療を受けておられたのにも拘らず、改善せず完治に期間を要してしまった症例を紹介しております。
前回の症例
先月は単なる下肢の廃用性萎縮と、それに伴う下肢全体の浮腫により歩行が困難になられ、それを脳脊髄疾患と誤診され、職場復帰に期間を要してしまわれた人の症例を紹介しました。
【新シリーズ】医療機関で改善されず当院を訪れた症例~パーキンソン病を疑われたAさん~
今回は誤診と言うものではなかったのですが、当該医師の治療の選択肢が問題で、数ヶ月の治療でも改善が見られないのにも拘らず、無駄に治療を継続してしまった症例です。実例:頚椎の異常で利き腕に異変が!
Wさん五十四歳、施設整備職員は冬季は除雪作業、夏季は草刈作業、時々設備のメンテナンスを主な仕事として永年隣接する市の外郭団体職員をされてます。
上腕から手指に異常を感じられたのは今年の二月上旬で、突然洗面台の前で自分の利き腕全体が曲げ伸ばしが困難になっているのに気がつかれました。
それでも何処も痛みを感じられなかったのですが、同時に首に違和感も感じられたことで、恐る恐る首を手で触れて骨の一部に凸部のようなものが触れます。
Wさんは急に恐れを感じ、整形外科クリニックを受診されました。
レントゲン検査の結果頚椎のズレが発見され、腕の症状の原因が神経由来のものと診断され、その当日から頸部の牽引のための治療を受けておられました。
その治療とは下顎にベルトを引っ掛け、ベルトの先に繋がれたロープを滑車を経て機械的に引っ張って、頸部を伸展させようとする物だったようです。
最初の頃は頻回に通院されたようでしたが、著しい改善が見られなかったことで間隔が開き、週に一度とか10日に一度とかの通院だったようです。
ところが手指まで症状が悪化したことで、「治療をサボっていたから症状が悪化してしまった」と思われたWさんは、再び毎日通院されたのですが無駄だった様でした。
仕方なく「他の治療方法は無いか」と当院を受診されたのですが、Wさんの頸肩背部の諸筋肉は著しく硬く、頸部や右肩関節の可動域は狭く、自発痛も感じられているようでした。
最初に医師の診断に沿い、頸部の治療を行なおうと触診しますと、斜角筋のような大きな筋肉は骨に貼りつき、正常な弾力性が見られません。
他の筋肉も同様で、胸鎖乳突筋もまるで骨のように堅く、頸部の可動性の欠如を示すものです。
治療の方法は一般的な鞭打ち(頚椎捻挫)と同様、運動性の失われた頸部の諸筋の緊張緩和と関節可動域の回復を試みました。
ですから幾度か体位変換を繰り返していただき、徹底的に頸部の諸筋肉の緊張緩和を図りましたがまだ、正常な首の動きは取り戻せませんでした。
それでも頸部の血流が改善できたため、「頭が軽くなって眼の見え方も良くなった」と改善をご実感されました。
それで今度は座位姿勢をとっていただき、「ネーゲリーの伸頭法」と呼ばれる方法で頭部を真上に引き上げ、もう一度首回しをお願いしましたが違和感のみが消えていたようでした。
つまり肩や腕の症状には何の変化も無かったようです。
以後の治療は一般的な肩凝り治療と同様、肩背部と上肢への揉捏法や按捏法を施し、更に腋窩動脈から橈骨動脈、並びに尺骨動脈の血流促進のマッサージを行ないました。
しかしまだ洗顔の際に行なう肩を窄める運動が困難で、肩が持ち上がりません。
幾度か肩上部の揉捏法を行なったのでしたが、半分ほどの効果しかなかったようで、まだ小さな運動痛を生じているようでしたので、今度は指圧を試みました。
用いる経穴は手の太陽小腸経で、殊に利き腕側の頚椎直側や肩上部への指圧が有効だったようでした。
Wさんに頸部や肩、上肢の関節可動域の回復を確かめていただくと、少し背中全体の筋肉の張り感が残っているようでしたが、概ね正常な関節可動域を取り戻せたようでした。
ご帰宅されても、今回回復した関節可動域を維持するため、時々体操を行なっていただくことにし、Wさんの治療を終了しました。まとめ
Wさんの症状は当初、頸部の違和感と利き腕側の関節可動域が狭まっていただけでした。
原因は整形外科での検査でC4と呼ばれる頚椎にズレが見つかり、この部で神経に悪影響が及び、これが上肢の関節の可動域を狭めているとの診断だったようです。
クリニックの医師の支持で首の牽引を行なっていたようでしたが改善せず、今度は同側の手指の握力低下や曲げ伸ばしに困難をきたされたのでした。
当院を訪れられたのが発症後から半年以上経っていたため、利き腕側上半身と上肢の症状が頚椎のズレによるものかどうか判断できるものではありませんでした。
と言うのは、頚椎の椎間関節裂隙から出る神経は、上肢の運動や感覚を司る神経だけであるのに、肩背部にまで症状が及んでいるのです。
そして何より頸部の諸筋肉は著しく萎縮をきたし、堅く骨に貼りついて頸部の可動性を妨げているのですから。
クリニックで行なわれた治療は、機器による頭部の牽引だったようですが、今では珍しくなった治療法と言えるものです。
私が国試に合格し、研修のためにお世話になった病院の担当指導医の先生から教えられた話に、「過去にはこんな方法でやっていた」と言う旧式な治療法なのです。
今だにこんな方法をやっている整形外科があったとは、夢にも思いませんでした。
私も伸頭法と呼ばれる方法で頚椎の矯正を図ることがありますが、術前には充分に頸部の諸筋肉の緊張緩和を図り、骨に貼りついている諸筋肉を剥がさねば整復するのが困難です。
つまりクリニックでは整復する確立の低い方法で頚椎のズレを直そうとしていたのです。
頻回に通院しても改善が見られなかったことで諦めかけていたところに、より症状の悪化が見られたことで褪せられたのか、再び頻回の治療に通院されたようですが無駄でした。
つまりWさんは首を動かすことや、肩や腕を動かすことを極端に避けられたのが症状を悪化させられた原因のようです。
結局Wさんは、首・肩・上肢を凝らされ、その上六月以後にエンジンつきの草刈機で除草作業をされたため、四指の曲げに関わる屈筋群の更なる緊張により、掌にまで症状が及んだのです。
Wさんの治療は単なる肩凝りの治療に加え、利き腕側の前腕前側へのマッサージと伸頭法を施しただけでした。
最後に行なった指圧は、Wさんの鎖骨と肩甲骨の隙間が狭かったことで、充分な筋肉への揉捏が行なえなかったためで、隙間が広ければもっと簡単に完治が見られたでしょう。
何より特筆すべきは、一箇所のクリニックや治療院の治療で改善が見られねば、他のクリニックや治療院を受診すべきと言うことです。
偶然を期待するような治療を永く受けていても、時間とお金の無駄と言えるのではないでしょうか?
著者プロフィール

兼田 茂和
国家資格あん摩マッサージ指圧師保有。
日常的に抱えている慢性痛に対し、その痛みの原因を追究して根本を改善することで、痛みの軽減を目指します。日々、人の命を預かる重みを感じ、ひとりひとりに合った施術で、最後まで誠心誠意施術致します。
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